離してと言ったのに、翠笑は抱き締める腕に力を入れた。
バクバクしていた心臓は、条件反射のように落ち着いていく。
「氷霞ちゃん。獅紋を見て、怖くなっちゃった?」
「っ、夜唄」
「大丈夫。誰にも聞こえないよ」
耳に馴染む声に、肩の力を抜いた。
出来ることなら知られたくなかったけど、バレてしまったならもう隠す意味は無い。
「……正しいこと、言ってるから。私……」
「うん。氷霞ちゃんは真面目だから、獅紋の言葉も真に受けちゃうよね」
「最初から、分かってた。許されないことだって……」
でも、あんな言葉を聞いてしまったら、殺し屋であることさえ、怖くなって。
ボスの為だからって、覚悟してたのに。
それさえも全部、許されない。
「ねぇ、氷霞ちゃん。今から辛いこと言うけど、聞いて?」
「……うん」



