そんな思いで言葉を遮ると、來樺院獅紋は目元から手を離して私を見た。
白蓬李璃を意識した今なら、効果があるだろうか。
私は白蓬李璃の特徴を聞いてから、こっそり練習していたことを試す為に、適当な理由を考えた。
「それにしても。獅紋は、よく私に謝るね」
ふ、と柔らかい笑顔を作る。
数日鏡と向き合って、何とか自然な微笑みは作れるようになったのだけど、どうだろう。
來樺院獅紋の反応を注意して見ると、彼は目を見開いた。
「李璃……」
口からこぼれた呟きは、成果が上々であることを教えてくれる。
あまり長く笑っているのも変なので、私は表情を戻して立ち上がった。
「やっぱり、保健室行ってくる。それじゃ」
「あ、あぁ……」
來樺院獅紋から離れ、中庭を出る。
もう見えないだろう、というところまで来ると、自然な速さになるよう気をつけていた歩みを、心のままに速くした。



