白の姫に差し伸べられた、光と闇の手



目を合わせずに尋ねると、來樺院獅紋は淡々と答える。




「緊張しているだろう。俺を怖がるのは、後暗いところがある人間だが……黒塚も、法に触れることをしているのか?」




來樺院獅紋の落ち着いた声とは裏腹に、私の心臓はバクバクと早鐘を打った。


殺し屋だと気付かれた?

いや、まだ確信を持っているわけじゃないはず。


初対面の時だって、結局は別の意図があった。

落ち着いて対処すれば大丈夫。



私はこっそり深呼吸をして、左手の親指と人差し指を無意識に擦りながら口を開いた。




「違う。好きだから、緊張してる」


「……好き?」




聞き返す声を聞いて、緊張を飲み込みながら、來樺院獅紋に顔を向ける。


大丈夫。

ピンチはチャンスに変えられる。




「恋愛対象として、獅紋が好きだから。あれだけ近付けば、緊張するのは当然」