「あ……獅紋」


「……黒塚か」




静かな場所を探していたら、偶然出くわした。

そんな体を装って、茂みの奥の木に凭れて座っている來樺院獅紋の前に現れる。


ここは中庭の隅で、周りを壁と茂みに囲まれているから、人目を遮れるようだ。

いい暗殺スポットだな、と頭の隅に浮かぶ。




「ここ、居てもいい?」


「あぁ」




許可を取って、來樺院獅紋が凭れる木に近付こうとすると、足がふらついてバランスを崩してしまった。


このままじゃ、木にぶつかる……!


ワンテンポ遅れて受け身を取ろうと身構えると、魔力反応と共に横から強い風が吹いて、私の体は來樺院獅紋の方に倒れ込んだ。




「っ……」


「大丈夫か?」




予想したような硬い衝撃は無く、横向きに倒れた体に腕が回される。

その直後、來樺院獅紋の声がすぐ近くで聞こえて、あぁ、抱き留められたのか、と理解した。