翌日、いつものように起きるとお母さんはもういなかった。
テーブルには【パートに行ってきます。鍵はポストに入れといてね。行ってらっしゃい お母さんより】と書かれたメモが置いてあってその隣にはいつものように朝ごはんが用意されている。
「フレンチトーストだ……美味しそう」
お皿に並べられているフランスパンで作られているフレンチトーストは、いつも何かがある時に作ってくれるお母さんの得意料理だ。
私は冷めてしまっているのを電子レンジで温め直して粉砂糖とハチミツをかけてナイフとフォークを使って食べた。ふわふわトロトロで蜂蜜の甘さがとても合って美味しかった。食べ終わるとお皿を片付けて身支度を済ませるとキャリーケースを玄関に移動させてから着替えをする。デニムのショートパンツにオフショルのブラウスを着て髪を耳の位置でツインテールにした。
「……似合わないかな、これ」
唯一ある可愛い洋服で一目惚れをしたものだけど、一度も袖を通してないから新品に近い。何度も鏡を見たりショーパンだからひんやりして落ち着かない。
すると、チャイムが鳴ったのでショルダーバックを肩から掛けて出ると朝森先輩がいた。
「えまちゃん、おはよう〜」
「お、おはようございますっ」
「えまちゃん、今日可愛いね」
朝森先輩の後ろには、桐野先輩と会長さんくま先輩がいたのに気づいて急いでキャリーケースを持って玄関を出た。
「先生が車出してくれたから俺らもついてきた」
「あ、ありがとうございます」
会長に言われて思わずお礼を言うと、桐野先輩が朝森先輩の隣にやってくる。
「今日はちゃんとおしゃれしてるのね」
「は、はい。昨日、メイク教えてもらったのでしてみました」
「そう、可愛いわよ」
そう桐野先輩は言って髪に触れた。