生徒会の姫に任命された夜、私はお母さんと一緒に荷造りをしていた。


「でも、びっくりしちゃったわ〜まさか、えまが姫に選ばれるだなんてねぇ」

「私もびっくりで……お母さんが高校生の時も姫制度あったの?」


 お母さんはあの学校に通っていた卒業生なので姫に対しても反対することはなく、逆に面白がってる様子だった。


「あったわよ〜あんなにイケメンな子はいなかったけど」

「そうなんだ」

「私たちのいたときは立候補式だったし、寮もなかったわ。今は学校の売りが生徒会の姫制度と生徒会寮だからね。えまは興味がなかったみたいだけど」


 知らなかった……私、ただお母さんの母校だし安心かなぁって思ったから選んだに過ぎないんだよな。こうなることを予想もしていなかった。

 普通に入学して平々凡々な学生生活を過ごして、高校を卒業するんだって思ってたんだから。


「まぁ、とにかく頑張りなさい。さっき来てくれた朝森くんもいい子だったしね」


 私はキャリーケースに私服や下着、教科書類を詰め込み荷造りは一時間ほどで完了した。


「お母さん」

「ん?」

「私、出てって寂しくない? お父さん、まだ帰って来ないでしょう?」

「寂しくないって言ったら嘘になるけど、でも、えまの人生だもの。それに、高校生は今しかないんだしね。それにたまには帰ってくるでしょ?」


 お母さんは微笑むと「近いしね」なんて言っていた。無事、荷造りが終わった私はリビングでお母さんと一緒にホットココアを飲み談笑した。

 その後は朝森先輩にメッセージを入れるとすぐに既読が付いて【明日の十時くらいにおうちに行きます】と送られてきた。