「まぁ、知らないものは仕方ないわね。後で寮に一緒に行きましょうか、管理人さんからいろいろ聞けると思うわ」
「は、はぁ……」
「顧問からも、話があると思うのだけど……私呼んでくるわね」
桐野先輩は立ち上がるとこの教室から出ていってしまった。先輩方は最初に連れて来られた生徒会室にいるらしくそこに呼びに行ったんだと思うけど。なんだかいろいろありすぎてため息が出そうだ。
寮ってことは、家を出て生徒会の方々と暮らすってことだよね? 嘘でしょ……男の子たちと一緒に暮らすとか無理だし、それより明日からの女子生徒からの目線が怖いんだけど。
「……まぁ、ざっくり言うと姫って雑用係なのよね。生徒会では書類とか整理したりいろいろして寮はご飯作ったりかな」
桐野先輩は顧問である三沢拓人先生と生徒会寮の管理人である三沢唯奈さんが来てくれて今は説明を受けているところだ。
「家政婦さんみたいですね」
「そうだね。そんな感じかな」
家政婦、だと思ったら私でも出来るかも……
「困ったことがあったら、なんでも言ってね。生徒会メンバーに言ってもいいから」
「はい、ありがとうございます……お世話になります」
拓人さんと唯奈さんは夫婦で、この学校の卒業生。そして元生徒会メンバーで、一緒にいる中で在学中に恋人同士になり大学卒業してから結婚したんだとか。
「ちなみにね、寮ができてから毎年カップルできてるのよね。それに今年はイケメン揃いだしどの子選んでも素敵よねぇ」
「はぁ」
「まぁ、世間話はこの辺にして……この書類にサインをもらってもいいかしら」
唯奈さんは一枚の書類を私の前に差し出した。見出しには『入寮届』と書かれていて、もうすでに両親の名前まで記入され印鑑も押されている。
「あなたに話してからご両親に話に行こうと思っていたのだけど、優星くんが、ね」
「優星くん……?」
「朝森優星ね。彼がご両親が先ですなんて言うものだから」
あの朝森先輩だ。私が逃げると思って外堀を埋めていたのだろう……簡単に想像がつく。