「――これが、わたし?」
目の前の鏡には、別人の私。制服も規定通りではなく、スカートは膝上だしブラウスも第一ボタンを外していてこんな格好初めてだ。
「ふふっ、やっぱりねぇ。磨けば、可愛くなれるのよ〜」
「べ、別人です……っ」
桐野先輩がニコニコして「これでいいでしょ? あとは何をお望み?」と耳元で囁いた。
「望みはないです……けど」
「けど?」
「私は、何をすればいいんでしょうか……」
話の中で姫にふさわしくないと言ったら、桐野先輩に生徒会用の休憩室らしい部屋に連れて行かれて別人にしてくださったんだけど……姫についてなんも知らないんだよね。
「私、姫とか興味なかったので全く知らなくて何か決まりとかあるんでしょうか?」
「はっきり言うのね。決まりはないけど……寮に住んでもらうことになるかしら」
「寮、ですか?」
「えぇ。生徒会寮よ。数年前に建てられて生徒会役員はそこに住むことが決まってるの。これも知らなかったかしら」
うん、知らなかった。
クラスの子たちが話しているのを聞いたことがあるけど私には関係ないことだと思っていたから入学してから今まで知ろうともしなかったし。