高校生になって数週間。

あの入学式のときの彼の苦しそうな顔は今でもずっとずっと忘れられなくて。


あれ以来、侑李という黒マスク野郎に会うことはないけれど、思い出すだけで腹が立って仕方ない。

だからこうして走ることに全集中。



「───ミオ!!颯!!」


「「っ!!」」



めずらしい。

この人のそこまでの大声って中々ない。


だからかピタッと、私と颯の足は大人しーく止まって。

そのまま重い首を動かしてみると、にこやかな笑みにそぐわない声が返ってきた。



「次の授業は?」


「「す、数学です」」


「はやく行け」


「「はい」」



命令口調だ……。

やっぱりこの人はナンバー1であり隊長であり、私たちの先輩。



「あーあ、クマのせいで鹿野さんに怒られちゃった」


「いや一緒に走ってたよね?競ってたよね?」



それにクマってなに。

確かにブスってあだ名よりはいいけど、正式名は1度も呼んでもらえないの…?


お昼休み。

購買で購入した限定フルーツサンドを頬張る颯、普通のサンドイッチの私。