「速すぎだろあいつら…!あんなの勝てるわけねーって!!」


「つーか、いつまで競ってんだ?おーーい、もう50メートルとっくに終わってるぞーーー」



さきさかーーー、さくまーーー、と。

クラスメイトの遠い遠い声が追いかけてきている今。


そんなの気にすることなくタタタタタッと走って、ぶわりと砂ぼこりがグラウンドに舞った。



「ねぇっ!いい加減ギブアップしたらっ!?」


「あれぇ?きついの?ちょっとつらくなっちゃったのっ?」


「そんなわけないじゃん!!このブーース!!」


「あっ!だからそれで呼ぶなって言ってんじゃん!!」



ダダダダダダダ───ッ!!!

抜いて抜かれての競い合いが終わりそうもない体育の実技。


高校生になって同じクラスでもある颯は、ここにきてフルネームが解放された。

向坂 颯(さきさか はやて)。

……うん、なんか言いづらいから颯だけでOK。



「あ、ちょうどいいところに…!鹿野、あいつらとは知り合いなんだろ?
悪いが止めてくれないか、これじゃあ次の授業にならない」



体育教師は通りすがりのお助けマンへご依頼らしい。