───遡ること、2ヶ月前。



「店……閉めることになった」



知り合いの借金の保証人になってしまい、「信頼できる友達だから大丈夫さ」なんて言っていたあとの裏切り。

魂が抜けてしまうギリギリのような、随分と痩せてしまったお父さんの一言。


私の家は、長く続くお弁当屋さんを営んでいて。

下町の住民から愛されるお店だったはずなのに。



「……お父さん、これ、」


「…あぁ…、そこ置いといてくれ」



頑張って借金を返そう、家族みんなで力を合わせれば大丈夫よ───。

そう言っていたお母さんが離婚届をテーブルに置いて行方不明に。


夜逃げってやつなのかな。

昨日は全然いつも通りにしてたし、まったく分からなかった私も私だと。



「いや頑張ろうよお父さん!私も高校行ったら出来るだけバイトするから…!」


「…ありがとな、澪」



佐久間 澪(さくま みお)、中学卒業を控えた15歳。

とりあえず我が家は笑えないレベルのピンチ、いわゆる崖っぷちだった。



『佐久間 澪さんですか?』


「は、はい」


『落ち着いて聞いてくださいね、あなたのお父さんが───』