うちは長く続いていたお弁当屋さんだったから。

おしゃれな見た目じゃなく地味で面白味もとくにない、そんな料理ばかりだったけど。


小さな頃からお手伝いしたりしてたから少しでも何かしたいと、自炊に名乗りをあげたのは私だった。



「でもお昼も出かけて夜は任務って……さっちゃんいつかぶっ倒れちゃわない…?」


「へいき。それに、忙しい方がいいんだ」


「でもっ!わっ!」


「心配してくれてありがとう」



くしゃっと私の頭を一撫で。

さっそくマンションを出て行こうとするから、思わず引き留めてしまった。



「さっちゃん!!スマホありがとう…!!絶対絶対、ずっと大切にする…!!」


「…そんなことで大袈裟だよ」



急いでいるはずなのに、ちゃんと足を止めて振り返ってくれる。

一緒にすごして、一緒に寝て2週間ちかく。


窃盗団だと思うとやっぱり気が引ける気持ちもあるけど、私は最初からこのひと自身に恐怖は無かった。



「でも、そんなに喜んでもらえると僕もうれしい。だから誰かに盗られたら……怒るよ?」


「えっ」


「じゃあね。お利口さんにお留守番してて」