「ミオ、はいこれ」


「え、」


「僕、明日から少し昼間も家を開けることが多くなりそうだから。なにかあったときはすぐ連絡して」



それは新品、新機種としてショップ前に売られていた白色のスマートフォン。

そんなものがさっちゃんから当たり前のように渡されたのは。


本来だったらもう少しで入学式だなぁ~なんて、ウキウキわくわくな気持ちに包まれる4月のはじめ。



「これ…さっちゃんが買ってくれたの…?」


「うん。もちろん料金は日々の働きから引いてるから、ミオが払ってると同等だよ」



だとしてもだ。

だとしても、なんかもう毎日お世話になりすぎてて申し訳なくなってくる。



「さっちゃん!!どこか疲れてるところとかない!?」


「え、僕?」


「うん!腰とか肩とか…!!」



スマホはありがたく受け取った。


久しぶりに手にする長方形に泣きそうになって。

そんな私は、お礼としてさっちゃんに今できることでも何かをしてあげたくて。



「ミオもいつもご飯作ってくれてるでしょ。あれ、かなり助かってるから僕も感謝してるんだよ」


「あんなの簡単なものしか作ってないのに…」