「残念だけど、あれは街灯」


「…なんだ…」


「この街は月なんか見えないよ」



そっかぁ…街灯かぁ。

青い月のようなものに見えた気がしたそれは、ただの青いライトだったみたいで。


───と、自然な会話を少し交えてしまった。



「君、ヤクザに目付けられてんだって?」



目の前にしゃがんでくる。

気づけばフェイスマスクは外されて、被っていたフードも取られて。


……ライトブラウン髪のあっさり顔イケメンさん、こんばんわ。



「…目を付けられてるっていうか、追ってくるんです」


「それは目を付けられてるからじゃない?」



そんなこと言われたって、だって理不尽なんだもん。

経緯をぜんぶ説明するとなると長くなるし、今はそんな気力ないし…。



「なら僕が匿ってあげようか」


「……どこで働かせる気ですか。からだを売るのなんか絶対やですよ」


「はは、そんなことしないよ」



というか、怪しすぎる。


そんなフェイスマスクなんかしちゃって、さっきは仲間だって数人連れてましたよね…?

誰かから逃げてるみたいだったし、追われてるみたいだったし…。