なんて、ひとまず落ち着いたはいいものの。



「基本は自由に使っていいから。不便なことがあったら言ってね」


「え、ないね…」


「はは、まぁ使っていけば生まれるよ」



なさすぎる。

広い脱衣場、広いお風呂、広いトイレ、広い廊下に広いキッチン。

同じくのリビング、寝室だろう部屋。


うん、まったくもって無さすぎて困るくらいだ。



「でも、ここの部屋は僕の自室だから用がある以外は出来るだけ入らないようにお願い」



一番奥にある部屋。

もちろん入るつもりは無かったし、こんな怖い街で窃盗団を作ってしまった程の男だ。


見ちゃいけないもので揃えられてるだろうから……コクンと頷いて了承。



「ところでさっちゃん、私は…いや僕はソファーで寝ればいい…?」


「いーよ、僕らの前では女の子で。外に出たら男の子になってもらうけど」



僕の呼び名、本当にそうなったの───?

そう言いながらも少し嬉しそうに笑ったさっちゃん。


別に嫌ではないらしい。

私も呼んでみてから楽しくなっちゃって、差し支えなければこれでいこうかと。