盗られていたのは私の心。



「さっちゃん、さっちゃん、」



降り注ぐキスの雨の隙間を見つけて問いかけてみる。

私の言葉なら、どんなに急いでいるときだって聞いてくれる。


どんなにうしろから追われていたって、戻って来てくれる。

それで一緒に連れていってくれる。



「きっと、さっちゃんの願いは叶うよ」


「…ほんと?」


「うん。だってみんな、…さっちゃんのことが大好きだから」



そんなに責任を感じなくていいんだよ。

あなたに救われた人は、こんなにも近くにいる。こんなにも目の前にいる。


もしそれでも自分を許すことが出来ないなら、罪悪感を背負い続けるなら。

私が一緒に背負うよ。



「話してくれてありがとう。そうだご飯!食べよっか!パエリアとローストされたビーフっ」


「…うん」


「よしっ!準備する!確かジュース買ってたような気がす───おわ…っ!」



立ち上がりかけた私は、また戻ってしまいました。

耳にふわっとかけられた髪、追いかけるように近づいてくる唇。


ドキンっと、ドキンちゃん到来。

ぎゅっと目をつむって、言葉を待つ。



「澪、」



脳までビビっと届いて。
それから徐々に全身に回ってくる。

からだが麻痺してしまったみたいだ、こんなの全身麻酔だ。



「さ、さっちゃ…」


「───…だいすきだよ。」



はい、とんでもねえ破壊力。