それで───…S.Roberが作られた。


猫の捜索だって引き受けます。
探偵業?そんなのお手のものです。


だって我らはお助けマンですから。


そんなS.Roberが誕生したんだって。

それはかつて存在していたはずのα9の面影を残したもの。

そこにいるだけで、さっちゃんにとっての思い出が甦る組織。



「それで僕はある日、…女の子のような顔をした男の子を拾ったんだ。それがまさかの、女の子のような顔をした女の子でね」


「…うん、それ女の子じゃん」


「ふっ、そう。かわいい女の子だったよ」



涙を拭ってあげると、お礼にちゅっと涙味のキスが返ってくる。

そんなもの欲しさにもう1度拭ってあげれば、こんどは少し深いもの。



「んん…っ、」


「…びっくりだよ。男の子になってまでヤクザから逃げてるんだもん」



……あ、似てるね。

女の子になってヤクザに身を差し出した、格好いいヒーローのような子に。


だからさっちゃんとも何かの縁が巡り会わせてくれたのかな…。



「でも一番に驚いたのは───…そんな子が今まで僕が盗んだ中で、何より代えがたい宝石だったってこと」



盗んだんじゃないよ。
月がね、綺麗だったから。青い月。


すごく綺麗だったから吸い込まれるみたいに、スーーッてその野良猫が着いていったんだよ。

引き込まれるみたいに、もう捕まってたのは私。