『ユーリっ!これあげる!!』



へへっと、八重歯が見える笑顔。

弟のような少年が鼻の下を掻くようにしながら差し出してきたのは、少しダサめのピアス。



『…おまえ、もしかして金もらったの?』


『こ、断ったよ…!でもどうしてもって言って無理やり渡してきたんだっ』


『報酬は貰わないって約束だっただろ睦月』


『うっ、だってぇ…』



名前が少しずつ上がってきたからこそ、初心を忘れてはならない。

そこにお金が発生してしまうと大人が絡んでくる。


そうなるとお遊びと親切の延長線で動けなくなるからこそ、俺はいつも睦月には口が酸っぱくなるほど言っていたというのに。



『まぁまぁ、ある意味こいつが初めて稼いで買ったプレゼントなんだ。もらってあげてよ侑李』


『…ったく、』



幼なじみの同い歳に宥められて、仕方なく受けとる。


だけど内心は嬉しかった。

ずっと兄のように接してきた自分だけど、本当の兄ではないから。


けれど睦月は実兄の皐月ではなく、俺にだけプレゼントしてくれたことが素直に嬉しかった。