会社員の水沢雅(みずさわみやび)は目を覚まし、ベッドから降りた時、目の前に置かれていたものにため息をつく。

「また置かれてる……」

雅の目の前には、高級な生地で作られた華やかな布団が綺麗に畳まれて置かれている。見栄えが重視されているこの布団は、普通に売られている布団ではない。嫁入り道具として花嫁が持って行くためのものである。

「これ、置くところないんですけど……」

一人暮らしをしているマンションの一室の隅には、着物や鏡台、桐たんすなどが並べられていた。

数日前から、毎日のように雅の部屋には何者かによって花嫁道具が贈られてきているのだ。

最初に贈られてきたのは、いかにも高級ですという雰囲気を持った漆塗りの箱だった。それからどんどん花嫁道具が増え、雅は気味が悪くなって花嫁道具を捨てたことがあったのだが、何度捨てても花嫁道具は戻ってきてしまうのだ。

「どうしたらいいの……」

どんどん増えていく花嫁道具を見て、雅はため息をつく。こんなものを貰ったとしても、恋人のいない雅は結婚する予定はないため、使い道はないのだ。