構成員が知ったら泣くぞ……。


こっそりため息を落としながら、おれは横目で静日を見た。


立派な玉座に長い脚をだらりと投げ出している。

行儀が悪いはずなのに、この男の場合、不思議とどんな体勢でも上品に美しく映ってしまう。



「ったく。学生証なんて大事なもんを、なんで知り合ったばっかの女に渡すかなあ」



小さく吐いたつもりなのに、相手にはしっかりと聞こえてたらしい。



「湊、機嫌わりーねえ」


そう言う静日はいつになくご機嫌だ。



「誰のせいだよ。一般組の女にあんなことして……つけあがるに決まってんだろ」

「逆、逆。つけあがってほしくてやってる」

「………はあ?」



いったい何たくらんでんだよ……。

おれが願うのは一つ。
“面倒なことになりませんように。”



さっき静日が連絡もなしに龍泉閣に来たことで、場は一時騒然となった。


いつもの気まぐれだと思われているぶんにはいいが、目的が“庶民の女に会うため”だと知られたら……。