《須坂side》
「小百合、綺麗だな。君を妻に出来て嬉しい」
それは本心だ、嘘ではない。だって俺は小百合に惚れているんだから。
━︎━︎彼女との出会いは、俺が教育係になった日だ。
『はじめまして、よろしくお願いします』
小百合は、本当に何もできない子だった。教えても直ぐには出来なくてお局さまに怒られているし、電話対応も緊張してこちらがヒヤヒヤして、エクセルは本当の初心者なのか? と思うくらいダメダメだった。
これ……やめるんじゃないかと思ったくらいに。でも、小百合は本当に一生懸命にやっていてそんな姿が『可愛いな』と思うようになった。
それからアプローチし続けたんだが、まったくダメだった。それどころか『もう〜冗談言わないでくださいよ』と言われる始末……。
他の社員に何度、哀れ目で見られたか分からない。
そんな俺が結婚できるのは“結婚より仕事がしたい”“親からのお見合いが億劫”だと小百合が思っているからだった。
彼女は“契約結婚”だと本当に思い込んでいる。
今はそれでいい。結婚すればこちらのものだ。俺しか見えないくらい愛せばいいんだから……。



