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「本当にいいんだな? 小百合」

「はい、もちろんです。私は、須坂さんと結婚します」


私、鈴野小百合(すずの さゆり)は結婚式を明日に控えている花嫁だ。明日は女の子なら皆憧れるその日だけはお姫様になれる一生に一度の晴れ舞台。

 そして今、電話の相手は須坂響(すさか ひびき)さん。私の勤めている会社の御曹司であり、専務である。


「なら……契約成立だな」

「うん、そうね」


 須坂さんのいう“契約”とは、お互いに求める条件が合致したということだ。


「俺は小百合を妻にする。だが、これは同居だ。君に求めるのはただ“良き妻”として隣に立っていればそれでいい─︎─︎」

「分かってます。須坂さんはこちらで仕事続けさせてくれるんですよね?」

「あぁ、好きにすればいいよ」