私はいつものように,隣のクラスの奏詞を迎えに行った。

奏詞に声をかけようとクラスを覗いたところで,あわてて口を閉じる。

奏詞はクラスメイトの女子と話していて,割ってはいるのは……と躊躇したからだ。

手にはかわいらしいシャーペンが握られていて,拾ってあげたのかな? 優しいなぁと思った。

そこまでは良かった。

奏詞は話に区切りをつけようとしたのだろう。



「もう,落とさないでね?」



私には見せたことも無いような笑みで,たった一言そういった。

奏詞が好きな私には分かった。

あれは,好きな人に向ける表情だ。

私には向けられることのない。

相手は素朴な感じの可愛い子で,1つ結びにしていた。

その髪の毛も,絡まったりしていない。

奏詞のタイプって,あぁいう子なんだ。

私とは全く系統が違う。

その子も女の子って感じに頬を染めていて,2人の関係はもう,決まったも同然だった。