「……やめてっ」

 荒い呼吸が静かな部屋に響く。飛び起きたベッドの上で、眩しい光に目を細めた。違和感のある額には、(ぬる)くなった冷却ジェルシートが乾燥しかけのまま引っ付いている。

 時刻は午後三時。そうだ、私は熱を出して学校を休んでいたんだ。

 顔や首から背中まで、雨の中を歩いたような凄い汗。

 あれは、夢……だったのね。
 約束を破るようなことをしたから、後悔の念があんな形で現れたんだ。

 驚き、恐怖、それから胸の高鳴りが混ざったような不思議な気分。

 それにしても、触れ合った唇の感触がやけにリアルに感じた。

「なんて、ふしだらな……」

 取り敢えず、肌にまとわり付くような気持ち悪いパジャマを着替えないと。

 ベッドを降りようと脚を曲げた時、こちらを見ているふたつの目と目が合った。時が止まったようにその顔を凝視する。

「何が、ふしだらなの?」

 首を傾げる兎のような小動物に、私は声にならない声を出した。

 どうして、私の部屋に藤春さんがいるの⁉︎