スノー&ドロップス

 文化祭当日は、ほとんどの裏方を引き受けて、クラスメイトたちを外へ送り出した。
 今回は押し付けられたわけではない。自分から進んで、教室に残りたいと申し出たのだ。一緒に回る人もいないし、なにか役割を与えられている方がよっぽど楽だから。

 受付はどうしても無理なので、ドームの補修やライトの点灯などをして、あとは教室でうろうろしていたらいい。

 二組ほどの来客を迎え終えたとき、廊下が騒がしくなった。藤春くんなら、他クラスの偵察へ行ったはずだ。戻ってきたのかなと、何気なくのぞいてみたら。

「なにあの顔面国宝級イケメン! しかも東堂高校じゃない?」

「一人? 声掛けちゃう?」

 女子たちのキャッキャッとはしゃぐ声に、思わずドームの中へ隠れた。
 頭ひとつ分出た背に、黒い髪。チラリと見えたあの横顔は、間違いなく鶯くんだ。

 文化祭へ来るなんて聞いてない。どうしようと、暗闇の中であたふたしていると。

「藤春くんと並べて歩きたいよね。あの二人はレベチだわ〜って、え、青砥さん⁉︎ なにしてんの?」

 案内役の子がドームのドアを開け、大きな目をさらに丸めた。

「あ、あの、電球不良を、見つけまして……その」

 しどろもどろと言い訳を考えながら、シーッシーッと手のひらを合わせる。意図が伝わるわけもなく、そのうちもうひとつの人影が現れた。

「いた」

 女子たちの熱い視線など気にせず、鶯くんはドームへ入り込むとドアを閉じた。定員七人ほどのコンパクトな作りではあるけど、実際に肩を並べるとより狭く感じる。