《庵side》
カランカラン─︎─︎─︎……
「いらっしゃいませ」
「店長、今日も美味しそうね」
あれからとても早く毎日が過ぎていき、もう彩愛が専門学校を卒業して三年が経ち、俺はもうすぐ三十五歳になる。
歳をとったな……なんて最近思うようになった。
「そういえば彩ちゃん、もうすぐ帰ってくるんだよね?」
「はい、またすぐにあっちに行くかもしれないんですがね」
彩愛は卒業後に有名ホテルレストランのベーカリー部門に就職し、二年ほど働いていた。
だが、二年に一度フランスで開催されるパンの国際大会に出場・優勝。
それがきっかけでもっと本場で自分の力を試してみたい、勉強したいと言った彼女はフランスのパン屋で修行に行くことになった。
あんなにここで卒業後は働くと言っていた彼女が、俺と離れ国外に行くなんて……今じゃ俺の方が寂しく感じている。
だけど、俺には菜桜との過去のことがあるからか彩愛は時差があるはずなのに毎日電話をしてくれていたし心配とかはないんだけど……やはり不安になるし、寂しい。



