ここ数日大学のレポートやバイトでなかなか家でゆっくりできなかったけど今日は久しぶりに時間があった。
まだそれなりに賑わう大学のキャンパスを1人歩いていた。かじかむ手をロングコートのポケットに入れ、口が覆われるほど大袈裟に巻かれたマフラーに顔を埋める。左手でズレ落ちて来そうになるメガネを直し、そのまま腕時計を確認すると夕方6時過ぎ。

まだこんな時間か… しょーがねぇ、芽衣と久しぶりに一緒にメシでも食うかな~。

コートのポケットからスマホを取り出し電話を掛ける。

…繋がらない。
双子と遊んでんのか?
まぁいいや、鍋の材料でも買って帰ろう。

冬は鍋に限る。

近くのスーパーに寄って食材を買って家に帰った。でもまだ芽衣は帰って来てなくて、先に準備だけすることにした。

8時には帰って来る約束はしたし、そのうち帰って来るだろ… そう思いながら鍋の用意をしていたら8時ギリギリにやっと芽衣が帰って来た。

「わっ、お兄ちゃん!珍しくない!?この時間に家にいるなんてっ」

「あぁー、超久しぶりにな。今日どっか遊びに行ってたのか?」

「うん、あのっ大志と!遊んでた!」

どこか様子のおかしい芽衣だけど、まぁ8時は守ってるし、それ以上は聞かないことにした。ちゃんと約束守ってるならそれでいいし。

「お兄ちゃん手作りのお鍋!?わーい♡久しぶりだね、嬉しいな!」

「おう、荷物置いて来いよ。早く食おうぜ」

「うん!手洗ってくる!」

芽衣と向き合って食卓を囲うのは本当久々で、芽衣の話を聞いたのもどれぐらい振りだろう…ずっと何か喋っていた。

「お兄ちゃん、今度はいつ早く帰って来る?」

「今度~、さぁ?ちょっとわかんねぇなー、最近バイトが1人辞めたからシフト増えたんだよ」

「そうなんだ…大変なんだね。今度は芽衣がご飯作ってあげる!」