「許可でなかった~!!!」

その足で佐藤家に行き(だって佐藤家なら8時過ぎてもいいって言ったもん)、ゲームをしている大志と奏志の間に割り込んで大絶叫。この感情を目の前にあったクッションにぶつけるようにぎゅ~っと力を入れて両手で潰した。

「そもそもバイトで車買えるほど稼げねーけどな」

私の声がうるさかったせいか顔をしかめた奏志がぼそっと答えた。

「そんな車で帰りたいなら正志にーちゃん呼べばいいのに、すぐ来てくれるよ」

大志はそう言ってくれたけど…、そうじゃない。車で帰りたいわけじゃないんだよ。

「…別に本当に車買おうとか思ってないもん」

たかだか高校生のバイトで車が買えると思ってるほどバカじゃないし。

「「じゃあなに?」」

「お兄ちゃんが…毎日遅くまでバイトしてるから私も少しでも力になりたいって思っただけだよ」

門限がどうだとか、自転車がどうだじゃなくて、お兄ちゃんだけいつも大変そうで私も何かしてあげられないかなってそう思ってただけ。

バイトをしようって思ったのが安易だったのかな。 

「「………。」」

「…帰るね」

叫んだらそこそこスッキリした。話も聞いてもらったし、またお兄ちゃんに遅いって怒られる前に帰ろう。

クッションを置いて立ち上がり、ドアノブに手をかけた。

「「いいこと思いついた!」」

ドアを開けようとする私の後ろで双子の共鳴が始まった。

「だよな!」

「あれしかないよな!」

よっぽどいいことが思いついたのか、2人してすごく楽しそう。

「?」

何かと思ってドアを開けるのをやめた私に声を揃える。

「「うちのとーちゃんに許可書書いてもらえばよくない!?」」