「バイトなんて許しません」


その夢はあっけなく朽ち果てたけど。

珍しくお兄ちゃんが家にいる平日の夕方、満を持して宣言してみたものの一瞬で砕け散った。

「なんでー!?」

それともお兄ちゃんに相談したのが間違いだったのか、だけど高校生のバイトには保護者の同意書もいるし無断でバイトなんてできないから。言わないわけにはいかなかった。

てゆーかまさか却下されるとは思ってなかった。

ダイニングテーブルの椅子に座って佐藤さん家のパパに大学の入学祝いで買ってもらったノートパソコンをカタカタ鳴らしてるお兄ちゃん。

大学のレポートかなんかかな…その正面に座り、どうにか許可をもらおうと手を合わせた。

「お願い!バイトさせてよ!」

パソコンを叩く手を止め、ふぅっと息を吐いたお兄ちゃんがメガネを外して私の方を見た。

「理由は?」

「へ?」

「バイトがしたい理由をわかりやすく簡潔に答えなさい」

なにその数学の試験みたいな!理系男子むかつく!

「理由って…お金がほしいからしかないじゃん」

「遊ぶ金?いくらほしいわけ?」

「…それは…っ」

遊ぶお金が…欲しいわけじゃないけど。少ないけど毎月お小遣いはもらってるし、大志と奏志がよくお菓子くれるし、夕飯は食べにおいでよっ言われて佐藤家におよばれすることが多いから正直ご飯には困ってない。

欲しいものがあるとするならそれは…

「じゃあ何?何に使うの?それが言えないならバイトは認められないね」

再びメガネをかけて視線を私からパソコンの方へ向けた。これで終わりと告げられたみたいに。

「~っ!お兄ちゃんのバカ!お兄ちゃんのモヤシ!」

「モヤシってなんだよっ!!」

「メガネモヤシ!!!」



我が家にはバイトはしてはいけないというルールもあるらしい(ただし兄は可)