佐藤さん家のふたりとわたしと。

ふぁ~っと大きくあくびをしながら玄関から出る。
芽衣はまだ家から出て来ない。今日は俺らの方が早かった。

「芽衣まだ?」

「うん、まだ…っ」

昨日すぐに忘れたあのことを、朝一番思い出させられた。

「おはようございます!」

昨日の彼女…えーっと名前何だっけ?

か…、笠原梨々だっけ??

「一緒に学校へ行きましょう!」

「「は??」」

にこりと笑って俺らに問いかける。
つーかなんで家知ってんだ?ストーカーかよ!

「そうゆう約束ですよね?」

「約束って、別に付き合うわけじゃねぇって言ってたじゃねぇか」

「付き合わなくていいとは言いましたけど、一緒にいるって約束はしましたよね?」

「いや、だからっ」

「お兄ちゃんはまだこのこと知りませんよ♡」

いや、だからそれ完全に脅し!脅迫!犯罪!笠原キャプテンが金属バットさえ持ってなければ!

もはや清楚系を狙った敬語がより圧力になった。

奏志が次の言葉を失ってる。

「「………っ」」

一瞬静かになったこの空間に、ガチャ!バタバタバタッと騒がしい音が聞こえてきた。

「ごめーん、ちょっと遅れちゃった!………え?」

芽衣が2回瞬きをした。

俺と奏志と笠原梨々、そんで芽衣。

4人でなんとなくお見合い状態。

「さぁいきましょう!」

ぐいっと腕を引っ張られた、笠原梨々に。

「おいっ」

奏志も同じように引っ張られた。

俺らの間に入るように。

「「離せって」」

「離してもいいですけど、約束は守ってくださいね?」

「「………っ」」

むちゃくちゃ過ぎないか?そんな一方的な約束あるかよ!てゆーかなんでそんな俺らと一緒を演出したいんだそれは!

「…まだ行かないの?」

いつからいたかわからない優志、その後ろには織華ねぇーちゃんもいた。じっと俺たちを見て。

「あっ!優志!織華ねぇーちゃん一緒に行こ!」

ハッとした顔をした芽衣が2人の背中を押して歩き出した。また空気を読んだ。

にこにこと笑うこの女と俺らを残して。

つい目を細めて奏志を見たら同じように俺を見てた。