散々泣いた後、結華お姉ちゃんが大志と奏志と寝ていいよって言ってくれた。

2人の真ん中で寝るのは久しぶりだ。

12歳の誕生日が最後だったから。

「ねぇ、手繋いで寝よ?」

「「嫌だよ」」

すぐに断られた。
断られると思ってたけど。

全然眠れるはずもなくて、お兄ちゃんたちは帰って来ないし、連絡もない。

こんな不安な夜はどう過ごしたらいいの?

「ねぇ、まだ寝ない?」

「…寝ないよ」

大志の声。

「私の話聞いてくれる?」

「聞いてやるから、なんだよ」

奏志の声。

2人の優しい声を聞いて、小さく深呼吸をした。

ドキドキと胸が打つ、思い出すのはあの日のことだった。

ずっと封印して来た。

私だけのものにしておこうと思った。

そしたらいつもと変わらない私でいられるからって。


もうひとつ隠していた私の秘密。


今2人に打ち明けるから…

「…あのね、本当は知ってたの」

12歳の誕生日、お母さんたちからだと思って受話器を上げた電話は知らない男の人の声だった。


“行方がわかりません”


そうはっきり聞こえた。

なんで行方がわからなくなったのか、そのあとはちゃんと聞けなくてよくわからないんだけど、あまりの唐突な言葉に頭が真っ白になって忘れちゃったの。

びっくりしすぎてなかったことにしちゃった。

それからずっと私の中にお父さんとお母さんを作ってた。

だけど全部わかってたんだぁ…

「海外から振り込まれるお金も、誕生日プレゼントも、全部お兄ちゃんがやってたこと気付いてたけど気付かないフリしてた」

毎年誕生日には喜んでた。
電話がなくても。
それ以上は何もいらなかった。

「言えなかったの、お兄ちゃんに…」

言葉にしたら怖くて、現実味を帯びてしまうから。

「私にはみんながいるし、お父さんもお母さんもいなくても平気だって思ってたけど…」

そう言い聞かせて来た…
それでも…

「やっぱり生きててほしいなぁ…」

声が震える。

涙がこぼれる。

布団をすっぽり顔までかぶった。

「生きてるよ、絶対」

「お前がそう言うんだから生きてる!」

大志の優しい声と奏志の力強い声。

ゆっくり手を繋いでくれた。

「…うん」

2人がいる、それだけで不安が少し消えた。

暖かくて優しい、私より大きな手。


いつだって不安な夜はそばにいてくれる、私の大好きで大切なヒーローたち。



2人がいてくれて、本当によかった。