「ただいまー」

スーパーのビニール袋を持って家の中に入ると芽衣がソファーに座ってテレビを見ながら携帯をいじっていた。

「おかえり」

大志とケンカしたこともそうだけど、朝は俺とケンカしたんだ。

目も合せず携帯を見てる。

根に持つタイプのあいつはこんな時誰より長引くんだ。
…まぁいいけど。ほかっときゃそのうち収まるだろ。

ドカッと買い込んだ食料品をキッチンカウンターに置いた。


―プルルル、プルルル


「芽衣電話出て、俺買って来たやつ冷蔵庫に入れるから」

「…はぁい」

促すと嫌々ながらも芽衣が電話の受話器を取った。
ビニール袋から買って来た食料品を取り出し、冷蔵庫を開けようとした時だった。

「はい、もしもし日向野…っ」

なぜか途中で芽衣の声がなくなった。

不思議に思って振り返る。

「…芽衣?」

嫌な予感がした。

青ざめた芽衣の表情を見て、寒気がした。

「…お兄ちゃん、なんか、何言ってるかわかんないんだけどっ」

俺を見る目は明らかに動揺している。

「お父さんとお母さんが行方不明って…?行方不明ってそんなわけないよね!?だってお母さんたち海外で仕事してるもんね!?」

ずっと隠してきた。

「ねぇ、そうだよね!?だって今年も誕生日プレゼントくれたし、4年も前から行方不明ってそんなこと…っ」

こんな形で伝わってしまうなんて。

「ねぇ!お兄ちゃん!!!」

芽衣から受話器を奪うように取った。


“ご両親が見付かったかもしれません”


ずっと行方がわからなかった両親の手掛かりだった。