ー…。












“お前、好きなやついんの?”




「…なんで急に?」

「聞きたいから。芽衣に好きなやつがいるかどうか」

「好きなやつって…」

不思議そうな顔をする芽衣と、向き合って視線を合わせる。

冷たい風が頬を伝う。
しんっと静かな空気が流れた。

「悪りぃ!遅くなった!」

ドタバタと大きな物音を立てながら大志が家から出て来た。この空間を一気にぶっ壊すように。

「ギリッ間に合っ…?何、2人して見つめ合って黙りこくって」

「別に。遅れるぞ、早く行こーぜ」

2人に背を向け、何事もなかったように歩き出す。実際何もなかったし、今は。

「芽衣どしたの?なんかあった?」

「ううん!何もないよ!大志遅いから待ちくたびれちゃった!」

「あ、ごめんっ」

いつもと変わらない空気感で他愛もないことを話しながら学校へ向かった。
芽衣なんて俺がそんなこをを聞いたことも、すぐに忘れたと思う。