「……ありがとうございます」
「今の感じでいいよ。ゆっくりでもいいから間違わずにレジ打って」
「はい。あの、もし間違えたら?」
恐る恐る尋ねると、秋葉は笑顔のまま声を低くして言った。
「間違えんな。ミスったら殺すから」
「……はい」
目が怖いんですけど。
やっぱり無理だよ。
毒舌王子の秋葉と一緒に働くだなんて!
*
そして数時間後。
「ありがとうございましたー」
私は会計を終えたお客さんに頭を下げた。
ふう、なんとか一人でレジができるようになったぞ。
ホッと一息ついていると秋葉が話しかけてきた。
「ふぅん、どん臭そうな顔して、レジは大丈夫そうだな」
「ありがとうございます」
レジなんて打ったことなかったから、意外とすんなりできて自分でもびっくりしている。
もしかしてここのバイト、意外と自分に合っているのかも?
そんなことを考えていると、秋葉が脅しをかけてくる。
「だいぶ慣れてきたみたいだな。でも本番はお中元とお歳暮のシーズン、そこを乗り切れるかだからな」
「はいっ」
私が元気よく返事をすると、秋葉はクスリと笑う。
「ま、期待してる」
その笑顔が何とも可愛くて――。
うーん、イケメンってずるいな。
隣にいるだけで、感情がジェットコースターみたいになる。
仕事には慣れてきたけど、秋葉が隣にいるのは、まだちょっとだけ慣れない。