やっぱり卯月くんと話すの、慣れないなあ。

 クラスでも男子とあまり話さないようにしてるし。

 それが、目の前に居るのは天然記念物級イケメンの毒舌王子だし……。

「それと」

 卯月くんが鋭い目つきで私をにらむ。

 な、何!?

「俺のことは卯月くんじゃなくて秋葉と呼べ。俺も兄貴も卯月で紛らわしいからな」

「は!?」

 思わず蕎麦を噴き出す。

「うわっ、汚ったねーな!」

「ご、ごめん。卯月……じゃなくて秋葉くん。あはは」

「秋葉くんじゃなくて秋葉」

「あ、秋葉……ごめん、やっぱり、くん付じゃ……」

「秋葉でいいって」

 「でいい」とか言いつつ鋭い目付きで睨む秋葉くん。

 ひいっ、怖い! さすが不良!

「……秋葉」

 私は仕方なく呼び捨てにすることにした。

 ま、まさか、毒舌王子を名前で呼ぶ日が来ようとは……。

「僕のことも悠一でいいからね?」

 店長さんも優しく微笑んでくれる。

「分かりました。悠一……さん」

「よろしく」

 ホッ、どうやらこちらはさん付けでいいみたい。

「じゃあよろしくな、花帆」

 秋葉くんが、頼んでもないのに呼び捨てにしてくる。

 まさか、毒舌王子と名前で呼び合う関係になるだなんて。

 うう、何だか落ち着かない!