私がショックを受けていると、秋葉はゲンナリした顔で話し始めた。

「バレンタイン向けの新商品、できただろ?」

「ああ、チョコ大福?」

 チョコ大福は、二月から売り出した兎月堂の新商品。

 美味しいって評判なんだけど、試作品を何度も試食したせいか、秋葉はうんざりしているみたい。

「あれのせいでチョコはもう当分いらない。花帆も、バレンタインだからって俺に気を使わなくていいから」

「……うん」

 そんなあ!

 私のせっかくのバレンタイン計画が!

 *

 そして、二月十三日。

 秋葉はチョコなんていらないって言ってた。

 けど、もう莉茉ちゃんと約束しちゃったし、仕方ない。

 私は朝早く学校に来ると、みんなとチョコを作りに家庭科室へと向かった。

「バレンタインは秋葉くんと過ごすんでしょ?」
「良いなあ、あんなにイケメンな彼氏とラブラブで!」

 キラキラと目を輝かせるクラスメイトたち。

「そ、そうかな。あはは……」

 私は苦笑いを浮かべた。

 言えないよ。

 「チョコなんていらない」って言われただなんて。