「兎月堂の二階が私の部屋なんですよね?」

 お店の二階を見上げる。

「そうだよ。階段が急だから気をつけてね」

 狭い階段を上がり、店長さんが二階のカギを開ける。

 玄関を上がると、目の前にキッチンとリビングが見えた。

 建物は古いけど、中は意外と綺麗。

 綺麗なのは良いんだけど――。

 あれっ、なんか変だ。

 ……ここ、アパートじゃない。

 とまどう私に、店長さんが案内してくれる。

「ここがリビングで、ここが台所。ここが俺の部屋で、ここが秋葉の部屋。そしてここが、花帆さんの部屋だよ」

「えっ?」

 住み込みって……そういう?

 そこで私は、自分の勘違いに気づいた。

 さあっと血の気が引く。
 
 てっきり私、風呂トイレ共有のアパートかと思っていたけど、違う。

 ここ、卯月家だ。

 私、店長さんや卯月くんと同居することになっちゃったんだ!