「確かにあれは実咲を帰らせるためにとっさ出た言葉だけど、全部、本当のことだから」

 ウソだ。

 だって私には何も無い。

 実咲さんみたいに大人っぽい美人でもないし、莉茉ちゃんみたいに明るくて可愛いわけでもない。

 私なんかじゃ――。

 だけど秋葉は、私の肩をそっと抱き寄せた。

「バカだな。本当のことじゃないとあんな言葉、とっさに出てくるかよ」

 秋葉くんは、私の耳元でささやく。

「――俺は、花帆が好きなんだ。ずっとそばにいたい」

 熱っぽい瞳。

 添えられた手の温もり。

 まるで心の中の氷砂糖を溶かすような、暖かな言葉が耳元に注ぎ込まれる。

 秋葉くんが私のことを?

 そんな、まさか。

「う、ウソだぁ」

 嬉しいという気持ちと、そんなはずないという気持ち。

 色んな気持ちがごちゃ混ぜになって、わけも分からないまま、目からはポロポロと涙が溢れてくる。

「本当だよ」

 戸惑う私を、秋葉くんはそっと抱きしめた。

「全部、本当だよ。俺には花帆が必要だ。お前じゃねーと、ダメなんだよ」