実咲さんが出ていき、店内には妙な沈黙が残る。

 私はポカンと口を開けて実咲さんの出ていったばかりのドアを見つめた。

 秋葉がポンポンと私の肩を叩く。

「おつかれ。ありがとな、花帆」

 その温もりに、プツンと緊張の糸が切れて、目からは自然と涙が溢れてきた。

「はあぁ……どうなるかと思ったよぉ」

「悪い、実咲が酷いこと言ったから――」

 慰めようとする秋葉くんに、私は首を横に振った。

「ううん、違うの」

 私が泣きそうになっているのは、実咲さんの言葉に傷ついたからじゃない。

 私は――。

「私は……秋葉の言葉が嬉しかったの。例え実咲さんを帰らせるためのウソでも、秋葉が、私の事あんな風に良く言ってくれるなんて。私なんて全然――」

「ウソじゃねーよ」

 秋葉くんの強い口調に、私はハッと顔を上げた。