ビターなアイツと甘い関係 ~毒舌王子と同居して、ナイショの甘いバイトはじめました~



 だから私も勇気を出して実咲さんを見つめた。思い切って声を出す。

「あの実咲さん、今日のところはこれで帰ってもらえませんか?」

「どうして!」

 実咲さんの鋭い目線が私を見すえる。

 その剣幕に、一瞬ひるんでしまいそうになるけど、私は拳を握りしめ、言葉を続けた。

「私にとって、秋葉は大切な人。秋葉には幸せになって欲しいと思ってる。でも私には今の秋葉にあなたは必要だとは思えない。だから――」

 秋葉は静かにうなずいた。

「今の俺に必要なのは花帆なんだ。だから、実咲は帰ってくれねーか」

 三人の間を沈黙が包む。

 雨音だけが、ただ激しく屋根を打ち付ける。

「そう」

 やがて怒ったような悲しいような顔で実咲さんは立ち上がった。

「ならいい。冴えない人同士でせいぜい仲良くすれば」

 ツカツカと実咲さんは玄関へと歩いていく。

「お邪魔しました。もう来ないから」

 バタンと大きく音を立て、扉が閉まった。