「あ、それとさ」

 私が舞い上がっていると、店長さんが真面目な顔で質問してくる。

「君のことは採用で良いんだけど、その、住み込みで働くの希望だったね?」

「はいっ!」

 私は背筋を伸ばした。

「このお店、二階部分が住居になってるから、住むとしたらそこに住むことになるけど――」

 そういえば、このお店、二階がアパートっぽくなってたっけ。

 と、ここで店長さんは声を低くして聞いてくる。

「本当にいいの? 風呂とかトイレとか共用だし、女子高生なのに」

 あ、そっか。

 そう言えば、お父さんやお母さんに昔聞いたことがある。

 昔の安アパートって、お風呂とかトイレとか共同で大変だったって。

 ひょっとしたら、ここもそういう感じなのかな?

 うーん。

 正直言えば、ちょっとイヤだけど……住む場所が無いよりはずっとマシ。

「大丈夫です。よろしくお願いします!」

 私が頭を下げると、卯月くんはあからさまに渋い顔をした。

「マシで? 大丈夫か?」

「はい、覚悟はできてます」

「……まあ、それならいいけど。後悔するなよ?」

 ブツブツつぶやく卯月くん。

 何だろ。変なの。

 店長さんが右手を差し出した。

「それじゃあ、よろしくね!」

「はい!」

 私は差し出された右手を強く握り返した。

 よしっ、これから和菓子屋でアルバイト、頑張るぞ!