だけど、新しいバイトは見つからないまま、兎月堂は紅葉の季節をむかえたのでした。



「わぁー、秋らしい店内でステキですねぇ」

 ひっつめ髪にメガネをかけた女性、牧野さんがキョロキョロと店内を見回す。

 この人、じつは『タウンマガジン』というタウン誌の記者さんなんだ。

 雑誌の取材なんて初めて。

 緊張するなあ。

「はい。がんばって飾り付けしてみました。それで……こちらが新製品です」

 私はショーケースの中の栗まんじゅうを取り出した。

「わぁ、美味しそうですね」

 和菓子を見せたとたん、牧野さんのテンションが急に上がる。

「梶原さん、梶原さん、これ撮って下さい!」

「はいよ」

 奥から大きなカメラを持った男の人が現れる。

 カメラマンさんは、店内の和菓子をいくつか撮ると、悠一さんのほうへ向き直った。

「はい、次、店長さん、このお菓子を持って」

「ぼ、僕ですか!?」

 カメラマンさんの指示で、悠一さんがカチンコチンになりながら、和菓子を手に持った。