二人で夜道を歩く。

 私が下を向いていると、秋葉は静かな口調で聞いてきた。

「合コンはいまいちだったのか?」

「……うん」

 コクリとうなずくと、私は笑みを作った。
 
「ほら私、元々ああいう場所って好きじゃないし、なんか人を品定めしてるみたいな会話ばっかりで、そういうのダメなんだ」

「ああ」

 私の話を聞くと、秋葉は納得したようにうなずいた。

「何となく分かる。俺もイヤだから、そういうの」

「……だよね」

「それに、俺より良い男は居ないだろ」

 胸を張る秋葉。
 私はプッと笑って答えた。

「うん、そうみたい」

 夜空を見上げると、満天の星。

 私は思わず口に出した。

「私はね、合コンの間も秋葉のこと思い出してた」

「えっ?」

「これだったら、家で秋葉と話してた方が楽しかったなあって」

「……ああ、まあ、そうだろ。俺の話術に、他の男が適うかっつーの」

 フンと胸を張る秋葉。

 全く、子供なんだから。

 でも、そんな秋葉だから、一緒にいて落ち着くのかな。

「さ、帰ろう」

 秋葉がサッと右手を差し出してくる。

「……うん」

 私は少し戸惑ったけど、秋葉の手を取ると、二人で手をつないで歩き出した。

 腕にまとわりつく湿気はジメジメと蒸し暑い。

 だけど夜風はほんのりと涼しくて――。

 見上げると、夏の星がチカチカと輝いていた。

 秋葉って、満月みたい。

 ふと、私は思った。

 人を月に例えるなんて、なんだか不思議だけど――。

 優しくて、明るくて、真っ直ぐに照らしてくれる光、それが秋葉なんだな。