それからモモはずっと『いーくんいーくん』と、言いながら俺の後を追っかけてばかりいた。

そんな俺の、たったひとつの後悔。

髪をなでるふりをして、覆われている髪の毛をかき分けておでこからチラリとのぞくそれを目にして。

俺の胸が鈍い音を立てる。

あのときの記憶が鮮明によみがえってくる。


「……っ!」


慌てて前髪を真ん中に寄せるモモ。


「そうだっ、洗濯物冷たくなっちゃう!」


わざと思い出したように言うと、俺をすり抜けてパタパタと階段を上っていく。


「はあーーーー……」


俺は、モモのぬくもりの残るソファに、力なく埋もれた。