「君に入れてほしい子いっぱいいるんじゃないの? モモちゃんのことは気にしな
いで、誰か入れて帰りなよ」
「……断る。モモは俺が責任もって送っていくから結構」
「ふっ……、結構って、そんな所有物みたいな言い方」
「……あ?」
あの、ちょっと……?
ここだけ、空にも負けないくらい真っ黒い雰囲気が漂ってるんだけど……。
「モモは? どっちに送ってほしいの」
不機嫌に問いかけてくる伊緒くん。
えっ、それ聞く?
うう……伊緒くんのイジワル。
「てか、俺がそうしたいからそうする。行くよ、モモ」
聞いてきたのに、返答を待たない伊緒くんは、私の腕をつかむと軒のギリギリのところ前やってきて。
ぱさあっ……と、黒い傘を開いた。
私の傘よりも一回り大きい布地が、目の前でくるんと回転した。



