「どうしたの?」
隣から、真柴くんの声。
「ううん。真柴くん、私やっぱり──」
ちゃんと断ろうとしたとき、
「モモ、帰るよ。待ってたんだ」
私たちの間に入って来たのは伊緒くんで、持っている紺色の傘を少し上に掲げた。
「へっ?」
「だって傘もってないでしょ」
「持ってないけど……」
「俺、置き傘してたから」
「さすが伊緒くん……」
用意がいい。
あ、でも……。
隣にいる真柴くんをチラッと見上げる。
「俺、傘持ってるからモモちゃん送ってくって話になってるんだよね~」
「それはどうも。でも、俺も傘持ってるからその必要はないよ」
ふたりが、にらみ合っているように見えるのは気のせい?



