「分かった! ステーキって言ったら、牛のお肉だよね」
「ぷっ、せめて牛肉って言ってくれる? わかる? 牛肉」
それすら怪しくて心配だ。
「分かるよ~。もしわかんなくても、お店の人に聞けばいいもんね」
間違ってもお店の人に「牛の肉ください」って言うなよ。
いや、モモなら言いかねないな。
俺がついていくと言っても、ひとりで大丈夫と言い張るモモは、元気よく玄関を飛び出していった。
そして、無事に帰ってきて、準備に取り掛かるが。
キッチンからは、ガッチャンガッチャン色んな音が聞こえてくる。
大丈夫かよ……。
心配で様子を見に行こうとすると、「伊緒くんはあっちに行ってて!」って追いやられるし。
たかが肉を焼くだけっていっても、気が気じゃねえ……。
そしてしばらくして。
「伊緒くんご飯出来たよー」
モモからご飯で呼ばれる日が来るとは。



