あっ……でも、そっか……。

久遠くんは私が起きて、どうにか久遠くんの腕から抜け出すことができた。

その数分後に久遠くんは目覚めたから……。

気づかないのも、当たり前だよね……。

それに、後ろから抱きついてきてくれたのも、きっと眠かったからだよね。


なんだか、ちょっと悲しいな……。

まぁ、仕方がないよね。

久遠くんとは、ハッピーエンドを迎えたいなって思ってる。

でも、学園の王子さまとカップルになれるなんて思ってない。

なにを、自分で傷ついてるんだろう。

「……天音」

「?どうしたの?」

「……お前、本当可愛すぎ」

久遠くんは、そう言いながら私の頭を優しく撫でた。

「……へ?」

時間が停止したような気がした。

かわ、いい……?

いや、気のせいだよね。

久遠くんは、助けてくれたあの時のように優しく笑みを向けてくれている。

金色に近いベージュの髪、水色の、透明感のあるダイアモンドのような久遠くんの容姿が、太陽のように眩しく輝いているように一瞬見えてしまった。

ドクッドクッ……って、心臓が切なく音を立ててる。

「あはははっ……あ、ありがとう……?なのかな……?」

誤魔化すように微笑みながら、私はそう言葉を発した。

「……ん。よしお前ら帰るぞ。迎えがきてる」

「……?迎え?」

「?知らないのか?俺たちは御曹司だぞ?車の一つや二つは出せる」

「えええっ……!?」