今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。


「えっ、く、久遠くんっ……!?だ、だめだよそう言うこと言ったらっ……!!」

「……ごめん」

「あっ……」

久遠くんはしゅんとして下を向いてしまった。

「ご、ごめんねっ……!!強く言うつもりはなかったんだけどっ……」

「……俺のこと嫌い?」

「き、嫌いじゃないよっ……!!」


む、むしろ大好きなんて言えないけどっ……。


「……天音、行くぞ」

「あっ、う、うんっ……!」


歩き出した蘭くんに頑張って早歩きをしてついて行く。


しばらくして、私の家に着いた。

2人、久遠くんと蘭くんは家に向かう間、一度も会話を交わしていない。


「あ……えっと……久遠くん、今日は従兄弟が来てて———」


ガチャン!!


「てんちゃんー!!!」


ぎゅうっ!!

「わわっ……!か、楓くん……」


玄関を開けて勢いよく飛び出てきたこの子は楓くんだ。

てんちゃんというのは、私のあだ名だ。


「やったぁ!てんちゃん帰ってきたー!!」


8人の従兄弟たちは玄関に立つ私にぎゅっと抱きついてくる。

この中で1番年上なのが、中学3年生の蓮くん。

そして次の小学5年生の双子、(一卵性)のふたりが真冬くんと冬樹くん。

小学2年生の楓くん。

1年生の奏くんに、

幼稚園児3人組の、

秀くんと夏樹くんと真夏くんだ。

「みんな、いい子にお留守番できたね、よしよし〜!」

みんなの頭を1人ずつ撫でて行く。

「おい、天音、コイツら全員か?」

「う、うん」

あと高校生と、大学生の年上の従兄弟がいるけど……。