だけど……天音が婚約者と抱きしめあった時、ああ仕方ないんだなって、切ない感情が溢れた。


俺はいまからこの婚約者に救われるというのに、コイツが憎くて仕方がなかった。


「……皇河さん?大丈夫ですか?」

「……っ、ああ」


優しく気遣わないでくれ……。


「……天音。こんなヤツと話さなくていいから」

「そんな言い方はないよ……!久遠くん、少しはみんなにも優しくしてあげて……?」


上目遣いになっている天音を横から見つめる。

あー……可愛らしい。


女を可愛いと思ったことなんて、自分の妹ぐらいだったのに……。


「まーたそんなに可愛くおねだりして。いいかげんにしないと僕死んじゃうよ?」

「お、おねだりっていうかっ……」


アイツ(久遠)はなんで天音にはあんなに甘い声出すのに、目だけで人を殺れるんだよ……。


「……あっ……!それで、提案があるんだけど……」

「んー?なに」


婚約者は天音のことをぎゅっと抱きしめる。


「皇河さんを、学園に入れてあげるって、どうかな……?」

「俺を……?」


おそらく天音の通っている上杉学園だろう。


天音と先ほど話していた時に、学園の話もしていた。

そして、俺の学園は治安が悪いことも言った。


いわゆる不良校だった。